■吹奏楽コラムVol.1■

さて、第1回目は作曲家の坂田雅弘先生へのインタビューです。
坂田先生は 2000年度吹奏楽コンクール課題曲「吹奏楽の為の序曲」の
作曲者として 知られています。
坂田先生の作曲に対するお考えや、音楽を始められたきっかけ、
また 今月の新譜、”吹奏楽の為の「光の帝国」”についてなど、
様々なお話をお伺しております。
聞き手:神長 一康)


 

■プロフィール
坂田  雅弘(さかた・まさひろ)
1970年、東京都生まれ。
ピアノを二宮瑞恵・荻野千里・三瓶弥生・保 坂千里の各氏に師事。
埼玉大学卒業後、現在、埼玉県公立高校教諭。
作曲家集団《碧 の会》・埼玉県音楽家協会・21世紀の吹奏楽《響宴》各会員。     

主な作品に、 『ピアノの為のソナチネ』
(1996年度PTNAピアノ コンペティションF級課題曲)
『吹奏楽の為の序曲』
(2000年度全日本吹奏楽 コンクール課題曲4)
『混声合唱の為の《5つの映像》』(カワイ出版) などがあ る。
2001年、朝日作曲賞受賞。




それでは坂田先生宜しくお願い致します。
■Q 1 坂田先生が音楽を始められたきっかけ、また作曲を始められたきっかけは何ですか?

★父親がクラシック音楽に親しんでいたので、(私の意思とは無関係に)幼少の頃 から
バッハやブラームスなどを聴かされていました。
音楽と直接的に関わるように なったのは、小学1年生の頃にピアノを習い始めたときです。

★ピアノを習い始めてからは、自分から積極的に音楽を聴くようになり、
中でもド ビュッシーのピアノ曲に惹かれました。
『月の光』や『亜麻色の髪の乙女』のような 音楽を書きたいと思い、小学2年生の頃には、
写譜をしたり作曲の真似事をしたりし ていました。

 

■Q 2、 坂田先生が中・高校生時代の吹奏楽体験はどのようなものでしたか?

★管弦楽部があればそれに入部したかったのですが、
中学校には吹奏楽部し かな かったので、 やむを得ず吹奏楽部に入部しました。
しかし、吹奏楽部でさまざまな音 楽を演奏するうちに、クラシック音楽のみならず種々のジャンルの音楽に
興味をもつ ようになったことを思えば、吹奏楽に携わったことは大きな収穫だったと思います。  

★パートは柔らかく深みのある音色をもつホルンに惹かれ、ホルンを担当しました。
先生の 指示で部長を務めたり何曲かアレンジをしたりしましたが、それ以外には特に目立っ た活動はしていません。

★当時のコンクール課題曲だった『波の見える風景』(真島俊夫作曲)、

『シン フォニックファンファーレとマーチ』(仲本政国作曲)、
当時さかんに演奏された 『アルヴァマー序曲』(J.バーンズ作曲)などは、特に気に入った作品でした。

 

■Q 3 坂田先生のお好きな作曲家、またお好きな作品は何ですか?

好きな作曲家は、大勢おりますが、たとえば以下の人たちです。     
J.S.バッハ、F.F.ショパン、M.ラヴェル、
S.ラフマニノフ、 I.ストラヴィンスキー です。

★好きな作品も、多数あります。  
マタイ受難曲(バッハ)、レクイエム(モーツァルト)、交響曲第9番 (ベートーヴェン)、
ピアノ協奏曲第1番(ショパン)、ドイツ=レクイエム(ブ ラームス)、
交響曲第8番(マーラー)、ダフニスとクロエ(ラヴェル) 、
ピアノ協 奏曲第3番(ラフマニノフ)、
火の鳥(ストラヴィンスキー)、春の祭典(ストラ ヴィンスキー)

★一方、好きな吹奏楽曲となると、その時々の境遇や想いを反映するためか、
やは りコンクール課題曲に集中することになります。
吹奏楽のための序曲(間宮芳生)、波の見える風景(真島俊夫)、
深層の祭 (三善晃)、カタロニアの栄光(間宮芳生)、
ベリーを摘んだらダンスにしよう(間 宮芳生)、パルス・モーションII(川崎美保)、
稲穂の波(福島弘和)、道祖神の詩 (福島弘和)  

 その他では、福島弘和氏のいくつかの作品、すなわち『碧の変奏』、『シンフォ ニエッタ』、
『トロンボーン協奏曲』、『木管五重奏曲』、 『オーボエとピアノのた めのソナチネ』などが気に入っています。

 

■Q 9  クラシック以外でお好きな音楽 はありますか?  

★クラシック作品と吹奏楽作品を除くと、あとは合唱作品になります。
特に、間 宮芳生氏・三善晃氏・新実徳英氏・ 木下牧子氏・鈴木輝昭氏・信長貴富氏の作品には
惹 かれる作品が多いです。
海外にも合唱作品は数多くありますが、(好きなものは)や はり
クラシック作品に分類されるものになってしまいますので、ここには挙げませ ん。   

★また、邦楽を始め、さまざまな国の民族音楽(民族楽器を用いた音楽)に惹か れます。

 

■Q 4  坂田先生が作曲されました2000年度吹奏楽コンクール《吹奏楽の為の序曲》ですが
作曲された事で当時、
各団体の演奏を聴いて感じら れた事や、印象に残った事 など、
課題曲を書かれた事で感じられたことは何ですか?

★課題曲になったのは2000年度ですが、作曲したのは1989年ですから、
こ の作品は、私自身の中では既に過去の曲となっていた作品です。
作曲してから課題曲 になるまでの11年間、私は吹奏楽から完全に離れていました。

あのとき、課題曲募 集の要項に目が止まらなかったら、
私は今でも吹奏楽と無縁のままであったかも知れ ません。
その意味では、吹奏楽に再び目を向ける契機をもたらした作品として、
(曲 想自体はごくありふれたものですが) 私自身にとっては
比較的重要なものであると言 えます。

しかし、作曲技法上におけるいくつかの問題点を抱えていることも事実ですの で、
それは、今後の作曲活動の中で克服すべき私自身の課題でしょう。

★多くの吹奏楽団体がこの作品を演奏して下さったようですが、日程の都合で、
コ ンクールでの生の演奏を私は一度も聴いておりません 。
後でいくつかの団体が演奏し たCDを聴いて、その素晴らしい演奏に感銘を受けました。
作曲者自身も新たに発見さ せられるような微妙な音色や音量の掛け合わせに、演奏者の工夫が窺えました。



■Q 5 5月の新譜であります吹奏楽の為の《光の帝国》について、
曲を書かれたきっかけや、御自身の持つ 曲のイメージ、
演奏する上でのアドバイスなど、作品 について教えて下さい。


★保科洋氏の作品『パストラーレ』に触発されて、この曲の作曲を始めました。
幸 い2つの主題もすぐに定まったので、(作品の出来不出来はともかく)
比較的短期間 の内に作曲を終えることができました。

★標題だけから考えると何か壮大な情景を思い浮かべるかも知れませんが、
この標 題は、必ずしもそういった先入観を与えようとするものではありません。

実際、R. マグリットの同名の作品は、鑑賞する者に対して、
思いもよらなかったような新鮮な 観点を与えるようなものになっています。
聴者それぞれの自由な発想を活かして、新 たな《光の帝国》を想像して頂ければと思います。


■Q 6 最近の吹奏楽について何か感じられていることはございますか? 

★主にコンクールに見られることですが、純粋な吹奏楽作品よりも管弦楽曲からの
編曲作品の演奏頻度の方が高いという現状を見ると、
現代の吹奏楽作曲家の方々には もう少し頑張って頂かなければ、という思いを強くもちます。

管弦楽で演奏すべきも のを吹奏楽で演奏したとしても、
やはりどこかに無理が生ずることになり、前者以上 のものは得られないでしょう。  

★実際、これらの編曲作品の多くは、コンクールの時間制限によって部分的にカッ トされています。
作曲者から見れば、カット(短縮)版で演奏されるという事態は、
(たとえ既に他界しているとしても)断腸の思いでしょう。
コンクールのために音楽 を犠牲にするのではなく、まず、既に存在する音楽自体を大切にし、
これが条件に適 合した場合にのみ、その曲をコンクールで演奏すべきではないでしょうか。  

★いずれにしても、吹奏楽にふさわしい音楽、吹奏楽ならではの音楽、といったも のを、
作曲家も演奏家も追究し続けていってほしいと思います。

 

■Q 7、今後の活動、現在手掛けられている作品、今後どのような作品を書きたいとお考 えですか?

★現在は、ピアノ曲・合唱曲・室内楽曲などを少しずつ書き進めています。
今後は、 やはり管弦楽曲を手掛けていきたいです。

★ピアノ曲や室内楽曲などでは、自己の思惟や感情をほぼ自由に表現できるように なりましたが、
吹奏楽や合唱などの編成となると、まだ充分にそれらを表現すること ができません。
演奏者や他の作曲家の意見・表現方法などを取り入れながら、
一層の 努力をしていきたいと考えています。

 

■Q 8 さて音楽以外のお話もお伺いしたいと思います。坂田先生のご趣味は何ですか??

★小説家・数学者・哲学者の出身地・活動跡地巡りです。
(頻繁にではありませんが、少 しまとまった時間がとれれば出掛けていきます。)   
★定理の考案、数理パズルの作成(職業がらということもありますが、実際、半 分以上は趣味になっています。)



■Q 9   お好きな映画などありますか??

★古典文学の原作に沿った映画(勝手な脚色をしていないもの)が好きです。
た とえば『レ=ミゼラブル』や『罪と罰』など。
また、ここ十年以内に製作されたもの では、『シンドラーのリスト』です。  

★映画ではありませんが、同様に鑑賞できるものとして、オペラやミュージカル にも好きなものは多いです。
後者では、『マイ=フェア=レディ』、『サウンド=オブ= ミュージック』、
『ウエスト=サイド=ストーリー』などです。

 

■様々な質問にお答え下さいましてありがとうございました!

そ れでは最後になりますが、このページも将来を担う、
若き小中高生のみなさんがたくさんご覧になっている事と思います。
吹奏楽に取り組む小中高生のみなさんへ坂田
先生からメッセージをお願い致します!!

★楽器を演奏できる人は幸福です。 これは、生涯楽しめるものですから。
若い時代 に1つか2つ楽器を修得した人としなかった人とでは、
その後の人生における彩りが かなり異なってくるでしょう。

コンクールや演奏会前になると大変なことも多くなる と思いますが、決して逃げてはいけません。
長く続ければ続けるほど、やめなくて良 かったと思えるようになります。
そして、続けるからには、一生懸命練習して、他の 誰よりも上手になることを目指してください。
楽しみながら毎日続けること、これが 上達への近道です。


★坂田雅弘先生、一つ一つの質問にご丁寧にお答え下さいましてありがとうございました。
課題曲は11年前の作品であったお話や、小学校2年生の時に作曲の真似事をしていた!!など
坂田
先生について様々なお話を伺う事が出来ました。
貴重なお話ありがとうございました!!

●坂田雅弘先生のホームページもございます。
全作品やエッセイなどがご覧になれます!!
坂田先生のHPはこちらです。

★また今回のご意見・ご感想、坂田さんへのメッセージなど
ぜひお待ちしております!!
メールでこちらまでお願い致します。
             


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