■吹奏楽コラムVol.6

第6回「吹奏楽コラム♪」は2001年下谷賞受賞、
2002年度吹奏楽コンクール課題曲の作曲家、岡田宏先生です。

聞き手:神長 一康・2003.10.1掲載)


 

■プロフィール
岡田宏(おかだ・ひろし)
1962年鎌倉市に生まれる。横浜国立大学教育学部音楽専攻卒。
作曲を田鎖大志郎、山本裕之の各氏に師事。
教職の傍ら、作曲・著作活動を展開。 現在、横浜国立大学大学院教育学研究科在学中。  

主な作品:追想〜ある遠い日の〜(2002年度全日本吹奏楽コンクール課題曲)
Joy of Spirit(下谷賞 優秀賞)        
合唱組曲:季節と花
歌曲集:わたしと小鳥とすずと
     フルートソナタ など

著書(いずれも共著):高校生の新・楽典ワーク(ドレミ)  
           学生のリコーダーアンサンブル (音友)       
           リコーダーアンサンブルコレクション(ドレミ)       




それでは岡田先生宜しくお願い致します。
■Q 1 音楽を始められたきっかけ、また作曲を始められたきっかけは何ですか?
★小学校4年生の時、当時幼稚園だった妹がピアノを始めることになり、「ついでにおまえもやるか?」と
言われて始めたんですね。初めは妹の方の進みが早かったのですが、飽きてしまったんでしょうね。
途中でやめてしまいました。
私は始めるのが遅かったのでなかなか苦労 することが多かったのですが、
恐らく音楽への感性が育っていたのでしょう。中断はあったのですが、何とか続けられました。
ちなみに私の家庭は全く 音楽的な環境はありませんでした。

★作曲を始めたきっかけは、大学時代にピアノの力量への限界を感じて、
何か新しい世界を求め始めたことからスタートしました。
一番音楽全体が 見渡せるようになるかな?という考えからです。

■Q 2 小・中・高校生時代の吹奏楽体験はございましたか?
★恥ずかしながら、当時ピアニストを志していたので、吹奏楽は全く眼中に無かったんです。
今から思えば本当に視野が狭い人間だったと思います。
もっと吹奏楽や合唱をやっておけば良かったと反省しています。

■Q 3 お好きな作曲家、またお好きな作品は何ですか?
★これはたくさんあると同時に、年をとるごとに変化していきますので、
今思いつくものをランダムに挙げていくしかないですね。    

<クラシック>
ブラームスのSym2番、ブルックナーのSym5番、バルトークの管弦楽のため の協奏曲、
ラヴェルのマメールロア、ブラームスの2重協奏曲、ラヴェル の ピアノ協奏曲、
フランクのヴァイオリンソナタ、ブラームスのピアノ5重奏曲、 プーランクのフルートソナタ、
ショパンのピアノソナタ第3番、ラヴェルの 弦楽4重奏曲、 メンデルスゾーンのピアトリオ第1番、
バッハの平均率、シューベルトの冬の旅    

現代ではリゲティの弦楽4重奏曲第1番、メシアンの世の終わりのため4重奏曲、
夏田昌和:アストレーション〜オーケストラのための(昨年の芥川賞作品)
山本裕之:カンティクム・トレムルムU(武満賞、芥川賞をダブル受賞した師の作品)

<ジャズ>
まだそれほど聴いわけではありませんが、お気に入りのアルバムは、
バド・パウエルの[The amazingBud Pouell]、エリック・ドルフィーの[Last date]
ジョン・コ ルトレーンの[ブルー・トレイン]、キャノンボール・アダレイの [Somethin'Else]です。

<吹奏楽>
スパーク:祝典のための音楽

ホゼイ:ぺルシス
ロースト:プスタ
真島俊夫:三日月にかかるヤコブのはしご
保科洋:風紋  
天野正道:コンチェルト・グロッソ・・・・。 

■Q 4  先生が聴かれた演奏会で、これまでに思い出に残っている演奏会はございますか?
クラシックでは、ムラヴィンスキー・レニングラードフィルが神奈川県民ホールで演奏した
ワーグナーが物凄い強烈に残っています。
あと、同じ場所でマルタ・ア ルゲルッチ と小澤・新日本フィルでの、ラヴェルのピアノコンチェルト。
アルゲリッチのライブはCD以上にスリルのある演奏をしてくれます。
もう1つはゆうぽうとで行われたヘルマン ・プライの 「冬の旅」全曲演奏。
とても温かみのある別の意味で印象に残っている演奏会で す。   

吹奏楽では今年の2月に東京芸術劇場で行われた創価グロリアの演奏会が 素晴らしかったですね。
コンクールですと、中学・高校の部の追想で、和名ヶ谷 中学と常総学院が印象に残っています。
前者は精緻で女性的・エレガントな演奏で、後者はしっかりした音で完璧なアンサンブルを目指した素晴らしいものでした。

■Q 5 さて岡田先生が作曲されました2002年度全日本吹奏楽コンクール課題曲
『追想〜あ る遠い日の〜』についてお伺い致します。
作曲された事で当時、印象に残った事など、課題曲を書かれた事で感じられたことは何ですか?
これは作曲コンクールですので、課題曲にならない可能性のほうがはるかに大 き いのです。(私の場合)
ここ7年間毎年応募させてもらってますけど、ほとんどが 予選落ちに なるわけです。
そのまま没にしてももったいないので、どこかでやってもらうようにはしていま すが・・・。

ということで、この曲を出した年も特に、課題曲になるなどということは意識してなかったのです。
悪い出来ではなかったけれどもいいとも思わなかっというか・・・。
です から一作品として 毎年応募している曲がたまたま引っかかったわけです。
今の願いはこの曲以外の曲 もいろいろな団体に演奏してもらう機会を増やしていくことです。

■Q 6 さて、2001年下谷賞受賞作品「Joy of Sprit」についてお伺いします。
この作品を書かれたきっかけとご自身の持つイメージについて。
また演奏の際のアドバイスなどをお願いします。 
これも実は課題曲応募のために作った作品ですが、書いているうちに楽想が膨ら みすぎて
完全なタイムオーバーとなってしまった曲です。
そうこうしているうちに下谷賞を 発見して応募 したのです。これは運良く初回で受賞してしまいましたが・・・。   
イメージとしては心の底から湧き上がってくる喜びといったものを自分なりの音 楽に表してみたものです。
演奏の際にはとにかく音楽する喜びを感じながら演奏することが大切で す。  

■Q 7 作曲をされる時は書かれる前、まず作品のイメージなど様々な事を
お考えになられるかと思いますが、岡田先生はどのように作曲をされ
一つの作品 を創り上げていかれるのでしょうか。
ジャンルによって違いますし、同じジャンルでもその都度多少違いますが、
ここでは吹奏楽の最近の書き方を紹介しておきます。
まず、大雑把なコンセプトを決めま す。例えば金管の響きを重視するとか、○○旋法の音階を使ってみようとか。
追想の場 合だと八分の六拍子で旋法を使った雰囲気のある曲をといった具合です。

次に出だしを書き始め、テーマ(核)になる旋律へと進んでいきます。
(もちろん出だしがテーマになることもあります。)  
そしてそのテーマの発展と同時にそれに対立する主題(第二主題)や、中間部の主題なども イメージしながら
(時には前もって書いてしまいますが)進めていきます。

また、 僕の曲はどちらかと言うとポリフォニーなので、対旋律(カウンター)を挿入することも多 いです。
昔は曲全体の設計図を先に書いて作るといったことを別のジャンルでしましたが、
発想の自由度が制限されるため、最近では書き進めながら修正をしていくといった方法をとっています。  

■Q 8 小・中・高校などの教育機関での吹奏楽指導による音楽教育について、
現在お感じになられている事?た今後望まれる事などはどのようなことでしょうか。
大切なのは、生徒が音楽を通 して表現の喜びを知り、社会性を身につけ、
生涯音楽を愛し続けていく基盤が作られていくことだと思います。
それさえあれば、コン クール重視の学校があっても良いし、ただ楽しむだけの部活であっても良いと思います。

また、少子化により、学校規模が小さくなり、吹奏楽部も演奏会をしたりコン クールに出る人数が
確保できない状況のところもあるようです。 部活動は学校単位といった枠を取っ払って地域単位 で
ある程度の人数を確保してやったほうが充実すると思います。(公立の場合は)
場所は引き続き学校を使い、少ないところは2・3校がいっしょになり、指導者は教育行政が
雇うという形(もちろんそれは先生でも構いません。)で 地域密着のチームを作っていくわけです。   


■Q 9 ご趣味は何ですか?

1、鉄道の旅 小学生のときから時刻表を見ることが大好きで、今でもちょっと疲 れたら
ふらっと電車に乗ることが目的の旅に出ます。もちろん観光もしますが・・ ・。
主に在来線の特急電車、特にブルートレインが好きですね。   

2、スポーツ観戦 いいストレス発散になります。最近はもっぱら野球です。
高校 時代の友人の影響と虎年生まれのせいでしょうか?横浜に住んでいながら阪神ファンです。
今年は18年ぶりの涙・涙・・・・。   

3、絵画鑑賞 就職してから、他の芸術も勉強しなければという思いから、いろい ろ見るようになりました。
作曲でかなりのエネルギーを使うのでどちらかというとホッと する(癒し系とは微妙に違う)絵が好きです。
海外ではデュフィー、ヒロ・ヤマガタ、日本画で は河合玉堂がいいですね。   

4、家族と山道を散歩すること。鎌倉との境に住んでいるので、
いろいろなハイキ ングコースがあり、たまに森林浴に出かけます。

■Q 9 今後の活動、現在手掛けられている作品、
今後どのような作品を創作したいとお考えですか?  
   
現在、某高校のハンドベル部のためにこのジャンルでは初の作品を書いています。
4曲ものの組曲ですが、ハンドベル独特の書法や鳴らし方があって、いろいろ勉強しないとわかりませんが、
指導者の先生のアドヴァイスのもと、楽しく書いています。

吹奏楽は引き続き書いていきますが、合唱・ピアノの曲も近々やる構想があります。
また、現在夜間の大学院に通っているので在学中にオケの現代曲にもチャレンジしたいと思っています。

★様々な質問にお答え下さいましてありがとうございました!
それでは最後になりますが、このページも将来を担う、若き小中高生のみなさんが
たくさんご覧になっている事と思います。
吹奏楽に取り組む小中高生のみなさんへ岡田先生からメッセージをお願い致します!!
まず演奏を楽しむことと、音楽に感動する心をもつことが一番大切です。
その 中で 少しでもうまくなること、良い演奏のために努力していく気持ちがついてくると思います。

また、楽器をやっていると(作曲もそうですが)必ずスランプや停滞の時期が訪れま す。
言い換えると壁といったところでしょうか?ここを乗り越えられるかどうかがうまくなるかどうかの鍵です。
決してがむしゃらにやればいいというのではなく、力をふっと抜いた瞬間にできるようになることもかえってあります。
要するに思考方法を時には変えてみるとうまくいくことがあるのです。   


岡田先生、お話どうもありがとうございました。
先生の作品を演奏される楽団の皆様ぜひご参考下さいませ。

岡田先生に質問などございましたら下記メールまでお気軽にどうぞ♪
また岡田先生のHP「追想 〜ある遠い日
の〜」もございます。
ぜひご覧下さいませ!

貴重なお話ありがとうございました!!

★今回のご意見・ご感想、岡田先生へのメッセージなど
ぜひお待ちしております!!
メールでこちらまでお願い致します。
           


 

 

このホームページに掲載されている音源・写真・文章の無断転用・複製などは堅くお断りします
2003 WIND ART PUBLISHING (JAPAN)All Rights reserved.