■吹奏楽コラムVol.3■

さて、第3回目は作曲家の鍋嶋豊先生へのインタビューです。
鍋嶋先生は2001年第4回「響宴」に出演、
また現代音楽の分野でも活躍されています。
新作の吹奏楽作品、また作曲以外にも現在の音楽教育についてなど
様々なお話をお伺いしております。
聞き手:神長 一康)


 

■プロフィール
鍋嶋豊(なべしま・ゆたか)
 1974年生まれ。熊本県出身。東京在中。
2000年、東京学芸大学大学院修士課程作曲専攻修了。
作曲を中島和宜、金田雄志、斉藤武、吉崎清富、
金田潮 、山内雅弘の各氏に師事。
現在、功玉社中学・高等学校芸術科主任教諭。
精力的に作曲活動を展開している。
作曲集団「向こう側への旅」会員。




それでは鍋嶋先生宜しくお願い致します。
■Q 1 音楽を始められたきっかけは何ですか?

小学5年生の時、ベートヴェンのソナタ「熱情」に出会ったのがきっかけです。
当時音楽のおの字も知らなかった私は、小泉今日子主演のドラマ「少女に何がおこったか」のなかで流れる
「熱情」を聴いて、人生最大の衝撃を受けました。

次の日、早速兄に楽譜を買ってきてもらい、たまたま家にあった電気オルガンで独学の猛練習を始めました。

■Q 2、作曲の始められたきっかけは何ですか?
★「熱情」との出会いにより、中学生の時はピアノに熱中していましたが、「いつかはこんな曲が書けるようになって、
自分が受けた衝撃を今度はだれかに与えたい」と思うようになっていきました。

■Q 3 鍋嶋先生が中・高校生時代の吹奏楽体験はどのようなものでしたか?
また当時お好きだった作品は何ですか?
★中学の時は部員が50人くらいいましたが、男子は5〜6人でした。
また、マーチングが盛んでしたので、吹奏楽コンクールが終わるとすぐにマーチングの練習がまっていて、
毎日炎天下のなかで真っ黒になるまでやっていました。
脱水症上でしょっちゅう生徒が倒れていたので、今考えるとかなりハードだったと思います。

★高校の時は部員が40人くらいで男女半々でした。みんなとても仲が良く、
この時にはじめて第1回の定期演奏会を行いました。

★当時好きだった曲はJ・スウェアリンジェンの「センチュリア」、「インヴィクタ序曲」、
リードの「エル・カミノ・レアル」、保科洋の「風紋」などです。

■Q 4 鍋嶋先生のお好きな作曲家、またお好きな作品は何ですか?
沢山ありますが、今思い浮かべるものを挙げると、ピアノソナタ「熱情」(ベートヴェン)、
24の練習曲(ショパン)、超絶技巧練習曲(リスト)、交響的舞曲(ラフマニノフ)、
法悦の詩(スクリャービン)、ダフニスとクロエ(ラヴェル)、火の鳥・春の祭典(ストラヴィンスキー)、
交響曲第7番(マーラー)、第3交響曲(リード)、交響曲第3番(バーンズ)、交響曲第1番( R・ジェーガー)、
ピアノソナタ第2番(P・ブーレーズ)、弦楽四重奏曲第2番(B・ファーニホウ)、アクティヴソナー(小野貴史)などです。


■Q 5 鍋嶋先生は吹奏楽作品の他にも室内楽などで現代作品も書かれておりますが、
吹奏楽と室内楽ではそれぞれ作曲をされる時どのような事を心掛けていらっしゃいますか?
★吹奏楽作品における私のテーマは、分かりやすい(調性があるないではなく、音楽の本質的な意味での)・
演奏して楽しい・演奏効果が期待出来る、3つです。
一方室内楽(現代音楽)のテーマは、最近では専ら形式の独創性について考察しているところです。

■Q 6 さて2001年第4回「響宴」出品作品「SIMPHONIC SOLITUDE」
(シンフォニック・ソリチュード)についてお伺いします。
この作品を書かれたきっかけとご自身の持つイメージはどのようなものでしょうか。
また「SIMPHONIC SOLITUDE」を今年のコンクールで演奏される高校の楽団も多くございます。
演奏の際のアドバイスなどをお願いします。     
「SIMPHONIC SOLITUDE」は母校の先生と友人に勧められて1998年に作曲しました。
作曲にあたっては中学・高校の吹奏楽部での思い出を回想しながら曲想を練りました。

★演奏にあたっては、まずテンポ設定が重要になってきます。スコアに指示されている
テンポで演奏される事をおすすめします。冒頭はトランペットとトロンボーンのテーマが
はっきりと聴き取れるように。
主部の旋律は全員フレーズの取り方をそろえるように。 中間部は音色・音量をバランス良く。
全体的にはなんとなくフォルテの音量のままで流されないように。ピアノ(あるいはピアニッシモ)の
音量設定の部分をしっかりと構成して下さい。


■Q 7、さて鍋嶋先生は作曲活動と同時に教育の現場でもお仕事をされ、また
吹奏楽指導にも多く携わっておりますが、ご自身が現在お感じになる音楽教育について、
また今後吹奏楽による音楽教育について望まれる事などはどのようなものでしょうか。
★私が現在奉職している学校は中高一貫の男子進学校です。
生徒の中には「大学受験にないからどうでもいい」と考える生徒も 少なくありません。
このような生徒を如何にして洗脳(?)していくかが私の使命であると考えています。
事実、音楽が嫌いだった生徒がいつの間にか休み時間にピアノを弾いていたり、合唱にはまったり 、
音楽の話に夢中になったりしている光景 に出会うと本当に嬉しくなります。

最近の子どもは感受性に乏しいと言われてますが、私はそうは思いません。
ただひと昔前と比較すると感受性を育む社会的な場が少しずつ減ってきているのは事実でしょう。
美しいもの(音楽・美術・あるいは文学など)に素直に感動できる感受性は、時間とともに
ゆっくりと成熟していくものです。
この過程における音楽教育と吹奏楽の役割は極めて重要であり、且つ最も有効なものであると信じています。

■Q 8 ご趣味は何ですか?
★映画鑑賞、美術館めぐり、温泉めぐり、日帰り旅行、野球観戦などです。
最近は忙しいので、雰囲気のあるBARで贅沢な時間を過ごしたい・・・(なんてね)
それと車が大好きです。赤のオープンカーを持っています。


■Q 9 今後の活動、現在手掛けられている作品、今後どのような作品を書きたいとお考えですか?     
★2003年4月に、結婚式に相応しい曲という依頼で「ウエディング・コラール」という小編成(20人程度)の
吹奏楽作品を書きました。二部形式で2つのロマンティックなメロディーが歌われ、ウインドチャイムで余韻を
残しながら静かに終わる作品です。

★また2003年12月に行われる東京大学吹奏楽部定期演奏会においての委嘱作品を手がけております。
みなさんぜひ聴きにいらして下さいませ。

■様々な質問にお答え下さいましてありがとうございました!

そ れでは最後になりますが、このページも将来を担う、
若き小中高生のみなさんがたくさんご覧になっている事と思います。
吹奏楽に取り組む小中高生のみなさんへ鍋嶋先生からメッセージをお願い致します!!

小中高生の皆さんは、部活と勉強の両立で大変でしょう。
しかし、大変だからこそやり抜くとに大きな価値があります。
今の私がそうであるように、この数年間の経験は必ず一生の財産になります。
なぜなら、互いに個性を認め合い、みんなでよりよい音楽を追求していくこと、
すなわち音づくりの作業は人づくりの作業と同じだからです。


★鍋嶋 豊先生、お話どうもありがとうございました。
今年「SIMPHONIC SOLITUDE」 をコンクール等で演奏する皆様、 ぜひご参考下さいませ。
他に演奏や作品についての質問などございましたら下記メールまでお気軽にどうぞ♪

鍋嶋先生貴重なお話ありがとうございました!!


★また今回のご意見・ご感想、鍋嶋先生へのメッセージなど
ぜひお待ちしております!!
メールでこちらまでお願い致します。
             

 

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