■吹奏楽コラムVol.9■

さて、第9回目は作・編曲家として、また航空自衛隊音楽隊のSAX奏者として
ご活躍の渡部哲哉先生へのインタビューです。
聞き手:神長)


渡部哲哉(わたなべ・てつや)
1973年東京都出身。 1996年、東京コンセルヴァトアール尚美(現、東京ミュージック&メディアアーツ尚美)を首席で卒業。在学中に専攻優秀賞・総合優秀賞を受賞。卒業演奏会に出演。 同年、航空自衛隊に入隊。 1997年、日本吹奏楽学会主催「管楽合奏のための作・編曲コンテスト」にて佳作及び審査員特別 賞を受賞。 2002年、「ジョイフル・ポケット」(CAFUAレコードよりレンタル)が、日本吹奏楽指導者協会(JBA)主催「作曲賞 下谷賞選考会」にて最高賞である「下谷賞優秀賞」を受賞。防衛庁より第3級防衛功労賞を授与。 2003年、「古都の彩」(ウインドアート出版よりレンタル)が、同選考会にて「佳作」を受賞し、2年連続入選となる。  

現在、航空自衛隊中部航空音楽隊サクソフォーン奏者兼作編曲家。 現在までに、ビムス・エディションズをはじめ、ブロード出版、CAFUAレコード、イースター音楽出版、ユニバース、ウィンドアート出版より楽譜が出版及びレンタルされている。 また、サクソフォーン奏者「原 博巳」氏のアレンジャーも務めている。  
これまでに、サクソフォーンを小串俊寿氏に師事。 室内楽を服部吉之、岩本伸一、指揮法を林紀人、作編曲を伊藤康英、高橋伸哉、吹奏楽を鈴木孝佳、近藤久敦、小澤俊朗、佐藤正人の各氏よりそれぞれ学ぶ。 日本吹奏楽学会会員。フィナーレ・ユーザーズ・クラブ会員。




それでは渡部先生宜しくお願い致します。
■Q 1 音楽、作曲を始められたきっかけは何ですか?
★幼少時に母親に無理矢理連れられ、音楽教室(エレクトーン)に通わされたのがきっかけです。
作曲を始めたのはつい最近ですが、編曲については小学生からです。 エレクトーンをやっていると、
どうしても試験などの関係でアレンジが必須になるんですよね。
吹奏楽への編曲は高校生からです。 これも自分から積極的に始めたと言うより、
先輩から言われて無理矢理やらされたと言った方が正しいかも知れませんね。(苦笑)

■Q 2 お好きな作曲家、またお好きな作品は何ですか?
★好きな作曲家は沢山いるので、書ききれませんね。
私は趣味で、マイナーな作曲家を捜してはCDを聞くという事をしているので、
あまり知られていない作曲家も好きですよ。
また、比較的有名な作曲家の作品でも、 あまり有名でない曲を聴くのが好きですね。
最近では、L. バーナーズ卿の「ネプチューンの凱旋」はお気に入りです。
(吹奏楽への編曲もほぼ完成しています)

好きな作品も沢山ありますけど、特に好きなのは「コーラル・ブルー」(真島俊夫 作曲)ですかね。
沖縄の旋律を、あそこまで魅力的な作品に仕上げてある作品は、そうそう無いのではないかと思ってます。
この曲は私が高校3年生の時の課題曲でもあるので、特に印象が強いのかも知れませんね。

■Q 3 中学・高校と吹奏楽をやられていたとのことですが、
ご自身の吹奏楽体験はどのようなものでしたか?
また当時思い出に残る作品などはございますか?
中学生時代は、クラリネットを希望していたんですが、手が長いからという理由で
トロンボーンになりました。
最初はイヤだったんですけど、テレビで谷啓が 吹いているのを見てから、
トロンボーン自体に凄く興味を持つようになりました。
親にネダってヤマハの一番安い楽器(しかも中古)を買って貰い、一生懸命 練習したをのを思い出します。

また部長も経験しました。 私の時代は、第2次ベビー・ブームと言われる世代なので、部員は130名超いました。
クラスの4分の1が吹奏楽部員という感じでした。 フルート20名、クラリネット20名、トランペット20名...。
こんな感じでした。 でもサックスは2〜3名しかいなかったような気がします。(楽器が無かったんです)
ダブルリード楽器もいませんでした。 今思えば、もの凄く偏った編成だったのかも知れませんね。

中学時代で一番想い出に残っているのは「カーニバルのマーチ」ですね。
実はこの曲、カップ・ミュートを使用するんですが、学校には勿論無く、
先生に無理矢理買って貰ったと言うエピソードがあります。(本数が半端じゃなかっ た...)
今では作曲した杉本氏とも親しくさせて頂いています。
当時のこういったエピソードもお話をしました。 結構、他の団体からも同じような話を聞いたようですよ。

サックスは高校から始めたんですが、最初はトロンボーンを続けたかったんですよ。
でも、入学する前に部活見学に行った時に、トロンボーンに凄く強面な先輩がいまして...。
トロンボーンになったら、きっといじめられると思い、断腸の思いでパートを変更しました。
(入ってから知ったんですが、その先輩は決して怖い人ではありませんでした。)
サックスにしたのは、中学の時の先輩がその高校でサックスをやっていたからです。 ただそれだけなんです。
高校時代は学生指揮者を務めました。吹奏楽の編曲もこの頃から始めました。
最初は移調楽器の楽譜を書くのに、いちいち指で数えながら書いていました。
で、音を出したら「グチャ〜!」...。参りました...。
良く覚えてはいませんけど、高校3年間で10曲弱編曲したんではないでしょうかね。


■Q 4 現在、作・編曲家として、また航空自衛隊中部航空音楽隊のSax奏者 として
大変ご活躍ですが、航空自衛隊音楽隊での音楽活動はどのようなものでしょうか。
★基本的には、月曜日から金曜日まで勤務しています。 週末に派遣演奏が多いので、
そのための練習が主になります。 勤務時間外を利用して、作編曲を行っています。
あと忘れてはならない事があります。 我々は音楽隊員ですが、基本的には自衛官なので、
時間を見つけては体力を維持するために運動をしています。
具体的には、5km走ったり筋力トレーニング等ですね。 つい先日も5km計測がありました。
結構辛いですが、いい汗かいた後は意外に気分がスッキリするものですよ。

■Q 5 渡部先生のオリジナル作品、編曲作品は大変多数ございますが、
作曲、また編曲をされる時、それぞれご自身どのようにイメージ・作風などを
生み出され作品を創作されるのでしょうか。
基本的には、何も考えてません。(笑) どんな作品にしようかという事は勿論考えますが、
ある程度考えが決まったら直ぐに書き始めてしまいます。
ですから私はスケッチとか書かないんです。 思いつくままに書いていくって言う感じです。
でも、直ぐに息詰まってしまうんですよ...。(泣)

あと作編曲で気を付けている事は、とにかく良い響きがするように各楽器の音域などに
注意して書くようにしています。 楽器によっては音域によって全然音色が変わるのもありますからね。
その辺を十分気を付けるようにしています。

■Q 6 さて、渡部作品 吹奏楽のための舞楽 「古都の彩」についてお伺いします。
この作品はシルクロードの歴史を辿る旅をテーマに書かれたとのことですが、
このテーマを生み出されたきっかけ、また作品に対しご自身の持つ作品のイメージ、
特徴はどのようなものでしょうか。
また今後演奏される楽団へ演奏のアドバイス等をお願い致します。
★この曲は、 交易の為に異邦人たちが行き交う道「シルクロード」の歴史を
辿りつつ遡る旅をテーマに掲げ書き始めました。
シルクロードを目指し日本の都から出発、歴史的な背景等を思い描きつつ、
異邦人となってこの道を遡る旅に出かけるというイメージです。

曲は大きく分けると日本情緒溢れる部分と、諸外国の民族性を表現した2つの部分に分けられます。
前半部分は日本の昔からの姿を表現し、わらべうた的なモ チーフを取り入れながら和製音調で進みます。
中間部分は、旅の途中で見た諸国の異国情緒溢れる情景を表現しています。
終盤では行進曲調に進み、日本と諸 外国の環境・文化の共有を表現しています。
これから世界が平和でかつ、積極的にいろいろな交流が出来たらと言う願いも込められています。  

演奏に際しては、1つ1つのパートが独立出来る様にしているため、技術的には若干難しいかと思います。
いろいろな要素が含まれていますのでパズルを組み 立てて行く様な感覚で演奏して頂けたらと思います。

■Q 7 編曲作品「ふるさと」(岡野貞一 作曲/渡部哲哉 編曲)
 についてお伺い致します。これは多くの方がご存じの名作ですが、
今回編曲された吹奏楽版はどのような作風を持たれているのでしょうか。

この曲の楽譜は様々な編曲が出ていると思います。 よりアンサンブルに近いスタイルで、
また吹奏楽の豊かで魅力的な響きを出す事を意識して編曲しました。
ですから1本1本が豊かな音で演奏すると、より豊かな響きが得られると思います。


■Q 8  吹奏楽でSAXを担当されている小・中高生はたくさんいらっしゃると思いますが、
SAX奏者の渡部先生から吹奏楽でSAXを演奏する上でのアドバイスを頂けますでしょうか?
サックスは「風が吹けば音は鳴る」と言われる程、簡単に音が出る楽器です。
ですが、そこから聞かせられるような音にするまでには時間がかかります。
ですから、いい音を出すためのイメージを持って練習する事が大切だと思います。
金銭的に余裕があるのであれば、プロの奏者の演奏を実際に聞きに行ったり、
CDを購入したり、レッスンに通うなどするのが、イメージを持つには一番早いと思います。
吹奏楽というバンドの中でのサックスの役割は、「金管楽器と木管楽器の橋渡し」だと思っています。
ですから、常に周りを聞きながら、バランスを考えて演奏するのがバンド全体の響きを作るのには重要だと思います。
これが出来るか出来ないかで、そのバンドの善し悪しが決まってしまうと行っても過言ではないでしょうね。
あとは、とにかく演奏は勿論ですが、練習も楽しんで行うと意外に早く上達しますよ。
常に目標を持って、音を楽しみながら練習・演奏して下さい。


■Q 9 最近の吹奏楽を聴かれ、また演奏され何か感じられている事はございますか?
オリジナル作品もあれば、クラシックの編曲、歌謡曲、演歌、ジャズ、ポップス等が 演奏出来る...
こんなに柔軟性のある演奏形態はそうそうないので、もっと世間一般の人々に 認知して欲しいと思っています。
また、どんな団体の演奏であれ、近くで演奏会が開催される時は、是非足を運んで生の演奏・音楽に接して
頂きたいと思います。 演奏を通じて、何か教えられる事も多いと思いますよ。 勇気付けられる事も多々です。

■Q 10 後の活動、現在手掛けられている作品を教えて下さい。
現在、7月30日に行われる航空自衛隊創設50周年記念演奏会のために新曲を書いています。
題名は「オマージュ」(仮名)。 空と、それに関わる人々に対し敬意を表する意味合いを込めて、書いています。
今まで作った曲よりも大きな曲になりそうなので、結構息詰まって大変ですが、是非聞いて頂きたいですね。

それと「3つのファンファーレ」(仮名)も作成中です。
これは ・「セレモニアル・ファンファーレ」(くす玉割り・除幕式・テープカット等で使用)
「フェスティバル・ファンファーレ」(イベントでの式典や、ちょっとした幕開け用)
「コンサート・ファンファーレ」(コンサートの幕開けに使用出来るように) と3つの曲で構成予定です。
現在前の2曲は完成しています。

■様々な質問にお答え下さいましてありがとうございました!

それでは最後になりますが、このページも将来を担う、
若き小中高生のみなさんがたくさんご覧になっている事と思います。
吹奏楽に取り組む小中高生のみなさんへ渡部
先生からメッセージをお願い致します!!
まずは何事でも楽しんでやらないと、上手くいきません。
「音楽」は、音を楽しむと書きます。 これを言葉のまま、活動していくだけでも上達は早いと思いますよ。
あとは、色々な音楽を聴いて下さい。 コンクールの曲しか知らないでは、ちょっと悲しいですよね。
機会があるなら、色々なコンサートに足を運んで下さい。 きっと得られる事が沢山あると思います。

様々な事を書いてきましたが、これからも私は吹奏楽に対して、少しでも貢献出来るように
努力していきたいと思っています。
それは微力な事かも知れませんが、今後もこの文化が発展するのであれば喜んで活動していきたいと思っています。
皆さんも、これを機に自分に何が出来るのかを考えてみてはいかがでしょうか。
それが見つかった時、吹奏楽文化はまた発展していくのでしょうね。


★渡部哲哉先生、大変興味深いお話、
どうもありがとうございました。


渡部先生のホームページもございます。
HPはこちらです。

★また今回のご意見・ご感想、渡部
先生へのメッセージなど
ぜひお待ちしております!!
メールでこちらまでお願い致します。
             


 

 

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